



「葬儀費用は、結局いくら用意すればいいのか」——初めて喪主を務めるとき、多くの方が最初にぶつかる不安です。葬儀は多くの場合、亡くなってから数日以内にすべてを決めなければならず、金額を比較する時間もありません。実際、直近2年以内に喪主を経験した人のうち87.1%が相見積もりを取らないまま葬儀社を決めています。この記事では、最新の全国調査をもとに葬儀費用の総額と内訳、形式別の相場、香典を差し引いた「実際の手出し」、支払いのタイミング、そして申請すればもらえる公的な給付までを順に整理します。
この記事でわかること
葬儀費用の総額の全国平均は、96.73万円です。これは葬儀相談サービス「いい葬儀」を運営する鎌倉新書が2026年5月に公表した「第7回お葬式に関する全国調査(2026年)」による数字で、直近2年以内に喪主を経験した40歳以上の男女2,000人への調査結果(調査期間2026年2月27日〜3月3日)です。前回調査からは約2.5万円の増加となりました。
ただし、この平均値だけを鵜呑みにするのは危険です。葬儀費用は選ぶ形式によって49万円台から122万円台まで、2倍以上の開きがあります。さらに同じ形式でも、参列者の人数、地域の火葬料、菩提寺の有無によって数十万円単位で変動します。まずは形式別のおおよその相場を、下の早見表で押さえておきましょう。
| 形式 | 平均費用 | 実施割合 | 通夜 | こんな方に |
|---|---|---|---|---|
| 一般葬 | 122.01万円 | 30.2% | あり | 会社関係・近所まで幅広く見送りたい |
| 家族葬 | 96.39万円 | 47.0% | あり | 家族・親族など近しい人だけで送りたい |
| 一日葬 | 74.43万円 | 11.9% | なし | 告別式は行いたいが日程の負担は抑えたい |
| 直葬・火葬式 | 49.56万円 | 10.8% | なし | 火葬のみで最小限に抑えたい |
いま最も選ばれているのは家族葬で、全体の47.0%を占めます。かつて主流だった一般葬は30.2%まで下がり、「参列者を絞って費用と負担を抑える」流れが定着しています。
葬儀の見積書は項目が数十行に及ぶこともありますが、中身は大きく3つに分けられます。この分類を押さえておくと、見積書のどこを削れば安くなるのかが一目でわかるようになります。
祭壇、棺、遺体の搬送・安置、ドライアイス、式場使用料、火葬料、スタッフの人件費など、葬儀を執り行うために必要な費用です。総額の約4分の3を占める最大の項目で、葬儀社が「プラン料金」「セット料金」として提示するのは通常この部分にあたります。
注意したいのは、この基本料金に何が含まれ、何が含まれないかは葬儀社によって違うという点です。火葬料や式場使用料が別建てになっているプランでは、表示価格が安く見えても最終的な支払額は変わりません。
通夜振る舞いや精進落としなどの飲食費が平均11.67万円、会葬御礼や香典返しなどの返礼品費が平均13.03万円で、合計24.70万円です。
この2つは参列者の人数に比例して増減する「変動費」です。つまり参列者が想定より増えれば、契約時の見積もりを超えて費用が膨らみます。逆にいえば、参列者を絞る家族葬が費用を抑えられるのは、基本料金よりもこの変動費が縮むためです。
読経料や戒名料といったお布施は、調査の平均総額96.73万円には含まれていません。菩提寺があり僧侶を招く場合は、この金額に加えて別途用意する必要があります。
同じ調査で喪主が困ったこととして最も多く挙がったのが「お布施の相場・マナーがわからない」でした。お布施は定価がなく、宗派・地域・戒名の位によって大きく変わるため、菩提寺がある場合は寺院に直接、菩提寺がない場合は葬儀社に地域の目安を確認するのが確実です。書き方や渡し方はお布施の書き方・マナー完全ガイドで詳しく解説しています。
| 区分 | 平均額 | 主な内容 | 何で増減するか |
|---|---|---|---|
| 葬儀一式(基本料金) | 72.02万円 | 祭壇・棺・搬送・安置・式場・火葬料・人件費 | 形式とグレード(ほぼ固定費) |
| 飲食費 | 11.67万円 | 通夜振る舞い・精進落とし | 参列者の人数(変動費) |
| 返礼品費 | 13.03万円 | 会葬御礼・香典返し | 参列者の人数(変動費) |
| 合計(調査の総額) | 96.73万円 | — | — |
| お布施(参考) | 別途 | 読経料・戒名料・御車代など | 宗派・地域・戒名の位 |
形式選びは、葬儀費用に最も大きく効く判断です。ここでは4つの形式の特徴と向き・不向きを整理します。それぞれの内訳や具体的な節約法は、各形式の詳細記事にまとめています。
通夜と告別式を2日かけて行い、親族に加えて会社関係・近隣・友人など幅広く参列してもらう従来型の葬儀です。費用は最も高くなりますが、香典収入も最も多く集まるため、後述する実質負担で見ると差が縮まるのが特徴です。故人の交友関係が広く、後日の弔問対応を避けたい場合に向いています。全体の流れはお葬式の流れと手順で確認できます。
家族・親族など近しい人だけで、通夜と告別式を行う形式です。実施割合47.0%と現在の主流で、参列者が少ない分、飲食費と返礼品費が抑えられます。ただし「家族葬だから必ず安い」わけではなく、基本料金の構成次第では一般葬と大きく変わらないこともあります。詳しくは家族葬の費用相場は?内訳と格安プランの罠と家族葬とは?費用・流れ・マナーをご覧ください。
通夜を省略し、告別式と火葬を1日で行う形式です。式場使用料や通夜振る舞いが1日分不要になるため、家族葬より20万円ほど下がります。遠方の親族や高齢の遺族の負担を減らせる一方、菩提寺によっては通夜の省略を認めない場合があるため、事前確認が必要です。
通夜も告別式も行わず、火葬のみを行う形式です。費用は最も安く抑えられますが、後日「きちんと見送れなかった」と感じたり、親族から反対されたりするケースもあります。判断材料は直葬とは?後悔しないための注意点と直葬の費用相場は?内訳と追加料金トラブルにまとめました。
葬儀費用を考えるうえで見落とされがちなのが、香典収入です。喪主が実際に負担するのは総額そのものではなく、次の金額になります。
実質負担額 = 葬儀費用の総額 + お布施 − 香典収入
香典の金額は故人との関係性で決まります。鎌倉新書の全国調査では、自分の親に対する香典が平均5.5万円で最も高く、配偶者の親が5.4万円、会社の上司・同僚・部下や友人・知人は平均1.2万〜1.3万円程度でした。この目安をもとに試算すると、形式ごとの手出しは次のようになります。
| 形式 | 費用の平均 | 参列者の想定 | 香典収入の目安 | 実質負担の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 一般葬 | 122.0万円 | 50名程度 | 約50万円 | 約70万円 |
| 家族葬 | 96.4万円 | 10名程度(親族中心) | 約25万円 | 約70万円 |
| 一日葬 | 74.4万円 | 10名程度 | 約25万円 | 約50万円 |
| 直葬・火葬式 | 49.6万円 | ごく少数/香典辞退 | ほぼなし | 約50万円 |
※参列者数と関係性を仮定した概算です。実際の香典額は地域や参列者の構成で大きく変わります。
この試算からわかるのは、一般葬と家族葬で実質負担があまり変わらない場合があるということです。一般葬は費用が高い代わりに香典も多く集まるため、単純に「家族葬にすれば安く済む」とは限りません。逆に家族葬で香典を辞退すると、収入がゼロになり手出しが増えます。香典辞退を検討している場合は、この点を織り込んで判断してください。香典の相場は香典の金額相場と正しい書き方で詳しく解説しています。
「まとまった現金をすぐに用意できるだろうか」という不安も、事前に知っておけば対処できます。
誰が払うか——喪主が支払うケースが最も多いものの、法律で喪主に支払い義務が定められているわけではありません。相続人で分担する、故人の預貯金から充てるといった方法も可能です。ただし亡くなった時点で口座が凍結されるため、故人の預金をあてにする場合は、相続人が単独で一定額を引き出せる「預貯金の払戻し制度」の利用を検討します。
いつ払うか——多くの葬儀社では、葬儀後1週間〜10日以内が支払い期限です。葬儀当日に集金するところもあります。香典は葬儀当日に集まるため、香典を支払いの一部に充てることは実務上可能です。
どう払うか——現金一括のほか、クレジットカード、葬儀ローン、コンビニ払いなどに対応する葬儀社が増えています。葬儀ローンは1〜36回程度の分割が可能で、カードローンやキャッシングより低金利になるのが一般的です。ただしカード払いに対応していない葬儀社もあるため、支払い方法は契約前に必ず確認してください。
同じ形式でも、地域によって費用は変わります。とくに差が大きいのが火葬料です。
多くの自治体では公営の火葬場があり、その市区町村の住民であれば火葬料は無料〜2万円以下が一般的です。一方で東京23区には公営の火葬場が限られ、火葬の多くを民営の斎場が担っています。この地域では火葬料が高止まりしており、23区内で6つの斎場を運営する東京博善は2026年4月1日から火葬料金(普通炉)を87,000円としました(従来の90,000円から3,000円の値下げ)。地方の公営火葬場と比べると、火葬料だけで7万円以上の差が生じることになります。
さらに同社は、2026年3月31日の火葬分をもって特別区区民葬儀(区民葬)の取扱いを終了しました。区民葬は本来、費用負担を抑えたい区民のための制度でしたが、実態が制度の目的から離れていたことが理由とされています。ただし区民葬の制度そのものが廃止されたわけではなく、東京博善以外の民営・公営の火葬場では引き続き利用できます。なお、生活保護受給者向けの減額火葬(39,000円)は継続されます。
東京23区で葬儀を行う場合は、この火葬料と区民葬の扱いを前提に見積もりを見る必要があります。火葬そのものの流れや手続きは火葬とは?当日の流れから費用相場・必要な手続きで解説しています。
「30万円台と説明されたのに、請求は80万円を超えた」——国民生活センターが2026年6月3日に公表した「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」では、こうした相談が後を絶たないことが示されています。同センターに寄せられた葬儀サービスの相談は2022年度951件、2023年度886件、2024年度978件、2025年度917件と、高止まりが続いています。
なぜ差が生まれるのか。理由は葬儀費用が「固定費」と「変動費」でできているのに、広告で表示されるのは固定費の一部だけだからです。
とくに注意したいのが安置日数です。火葬場が混み合う時期は火葬まで数日待つことがあり、その間の安置室利用料とドライアイス代が1日単位で加算されます。日数は自分では選べないため、見積もり時に「1日あたりいくら加算されるか」を必ず確認しておきましょう。
| 方法 | 効果の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 複数社から相見積もりを取る | 大(数十万円) | 同じ条件で揃えないと比較にならない |
| ② 形式を見直す(一般葬→一日葬など) | 大(20〜70万円) | 香典収入も減る/菩提寺の了解が必要 |
| ③ 公営斎場・市民葬を使う | 中(数万〜十数万円) | 住民要件あり/人気が高く日程が取りにくい |
| ④ 祭壇・棺・生花のグレードを下げる | 中(数万〜十数万円) | 親族の理解を得ておく |
| ⑤ 公的な給付金を漏れなく申請する | 小〜中(5〜7万円) | 申請しないともらえない/期限あり |
最も効果が大きいのは①の相見積もりです。前述の全国調査では87.1%が相見積もりを取っておらず、ここが最大の改善余地になっています。葬儀は時間がないなかで決めることになるため、可能であれば元気なうちに2〜3社へ事前相談し、資料と概算見積もりを取り寄せておくのが理想です。同じ調査では63.8%が事前準備をしないまま葬儀に臨んでいます。
なお、病院で亡くなった場合に紹介される葬儀社をそのまま使う必要はありません。搬送だけを依頼して、葬儀は別の社に頼むことも可能です。搬送を依頼した時点で契約が成立するわけではないため、その場で契約を急がされても保留にして構いません。
葬儀費用には、申請すれば受け取れる給付があります。いずれも自動では支給されず、申請が必要です。
| 制度 | 対象 | 金額 | 申請先・期限 |
|---|---|---|---|
| 葬祭費 | 国民健康保険・後期高齢者医療の加入者 | 東京23区7万円、大阪市5万円など自治体で差 | 市区町村/葬儀の翌日から2年 |
| 埋葬料 | 協会けんぽ・健康保険組合の加入者 | 5万円 | 健康保険組合等/死亡の翌日から2年 |
| 葬祭扶助 | 生活保護受給者など | 12歳以上20万6,000円以内、12歳未満16万4,000円以内 | 福祉事務所/葬儀前に申請 |
葬祭費は自治体によって金額が異なり、東京23区は7万円、大阪市などは5万円が目安です。ここで注意が必要なのが直葬・火葬式の扱いで、「葬儀を行った」と認められず支給対象外とする自治体があります。東京23区では港区・杉並区・足立区・千代田区がこれにあたるとされます。運用は見直されることがあるため、直葬を選ぶ場合はお住まいの市区町村の窓口で事前に確認してください。
葬祭扶助は他の2つと違い、葬儀を行う前に申請する必要があります。葬儀を終えてからでは支給されないため、費用の工面が難しい場合はまず福祉事務所に相談してください。
また相続税の申告では、葬式費用は遺産総額から差し引く「債務控除」の対象になります。ただし香典返し・墓石や墓地の購入費・初七日などの法要費用は対象外です(国税庁タックスアンサーNo.4129)。同じ会葬者へ渡すものでも、当日全員に配る会葬御礼は控除対象、後日贈る香典返しは対象外という違いがあるため、領収書は項目ごとに分けて保管しておきましょう。
A. 参列者の人数と関係性によります。親族中心の家族葬(10名程度)で25万円前後、一般葬(50名程度)で50万円前後が目安です。総額の半分程度がまかなえる計算になりますが、香典を辞退すると収入はゼロになります。香典をあてにして支払いを組む場合は、集まらなかった場合の備えも用意しておくと安心です。
A. 多くの葬儀社では葬儀後1週間〜10日以内が期限で、当日集金の場合もあります。支払い方法は現金のほか、クレジットカード・葬儀ローン・コンビニ払いに対応する社が増えています。葬儀ローンは1〜36回程度の分割が可能です。ただしカードに対応していない葬儀社もあるため、契約前の確認が必須です。
A. 搬送を依頼しただけであれば、葬儀の契約は成立していないため、原則としてキャンセル料はかかりません。搬送費用のみを支払って別の葬儀社に依頼することも可能です。その場で契約書へのサインを求められても、内容と金額に納得できるまで保留にして構いません。
A. 菩提寺がある場合は、寺院に直接「どのくらい包む方が多いでしょうか」と尋ねるのが最も確実です。失礼にはあたりません。菩提寺がない場合は、葬儀社に地域の目安を確認します。宗派・地域・戒名の位によって幅があるため、平均値だけで判断せず、実際に依頼する寺院の目安を確認してください。
A. 可能です。葬儀費用の負担者は法律で決まっておらず、相続人で分担しても問題ありません。ただし相続税の債務控除は実際に負担した人の相続分から差し引くため、誰がいくら負担したかがわかるように領収書と振込記録を残しておくと、後の手続きがスムーズです。
葬儀費用の全国平均は96.73万円ですが、大切なのは平均値そのものではなく、自分のケースでいくら手出しになるかです。形式で総額が決まり、参列者数で変動費と香典収入が動き、地域で火葬料が変わります。
最も効果が大きい対策は、複数社の見積もりを同じ条件で比べることです。実際には87.1%の喪主が相見積もりを取れていません。時間のあるうちに2〜3社へ事前相談しておくだけで、いざというときの選択肢と交渉余地が大きく変わります。あわせて、葬祭費や埋葬料といった申請すれば受け取れる給付も、忘れずに手続きしてください。