



お寺で行う一周忌は、身内だけ・家族のみでも準喪服(ブラックフォーマル)を着るのが基本です。
身内だけの一周忌をお寺で行う場合、「家族だけだから平服でいい?」と迷う方は多いものです。
お坊さんへの礼儀に加え、お寺は他家の法要と重なることも多く、ラフすぎる装いだと自分たちが浮いてしまうからです。
本記事ではお寺ならではの服装マナー、男女別・子供のコーディネート、夏冬の対策、靴を脱ぐシーンの足元の注意点まで、現場で迷わない情報を網羅します。
この記事でわかること

身内だけ・家族のみの一周忌でも、お寺でお経をあげていただく以上、服装は準喪服(ブラックフォーマル)が基本です。
喪服には3つの格があります。『正喪服』はモーニングや黒留袖など最もフォーマルな格式、『準喪服』は一般に喪服と呼ばれるブラックフォーマル、『略喪服(平服)』はダークスーツや地味なワンピースを指します。一周忌では、施主・参列者ともに準喪服が標準です。
監修者で1級葬祭ディレクターの千葉龍一氏によれば、法要に略礼服以外の装いで来られる方は、実際にはほとんど見かけないといいます。服装がくだけていても法要そのものができなくなるわけではないものの、ほかの親族との装いの差が目立ち、ご本人が居心地の悪さを感じることはある、とのことです。
現場で実際に起きている失敗は、喪服の格そのものよりも小さな抜けに集中しています。きちんと準備したつもりでネクタイを忘れてしまった、靴下を履き替えず色物のまま来てしまった、といった例です。お焼香で前に出るときだけ、ほかの方から靴下を借りたという話もあったといいます。
千葉氏は、法要は故人を改めて思い出して敬うとともに、自分自身を見つめ直す機会でもあると話します。普段の生活から少し離れてその時間に向き合うという意味でも、身内だけであっても砕けすぎない服装を選ぶことが大切であり、服装を整えることで気持ちの切り替えがしやすくなる、とのことです。
法要の案内状にある「平服」は普段着のことではなく、略喪服(ダークスーツや地味なワンピース)を指します。
該当するのは、黒・濃紺・ダークグレーといった暗い色の無地のスーツやワンピース、アンサンブルです。男性なら白のワイシャツに地味なネクタイ、女性なら黒のストッキングを合わせます。
一方、ジーンズ・Tシャツ・ポロシャツ・スニーカー・明るい色の服は「平服」には含まれません。ここを普段着と読み替えてしまうと、当日ひとりだけ浮いてしまいます。
なお、案内状に平服の指定がないときは、そのまま準喪服で問題ありません。迷ったときは格を上げておく方が安全です。
施主は参列者より軽い装いにしないのが原則で、施主は準喪服、参列者は準喪服から略喪服までが目安になります。
千葉氏によれば、そもそも施主の方から親族へ服装を指定して案内することは、実際にはほとんどないといいます。特に伝えなくても、皆さん礼服や準喪服で来られるのが一般的だからです。むしろ「平服でお越しください」と案内すると、どこまで崩してよいのかの判断が人によって分かれ、かえって混乱することがあるとのことです。
参列する側から「どこまでくだけてよいか」と尋ねられたときには、「黒や濃紺、ダークグレーなど暗い色のスーツであれば、周囲から浮くことはないと思います」と案内しているといいます。これが私服と略喪服の境目です。ジーンズ、Tシャツ、ポロシャツ、スニーカー、明るい色や柄物は、この線から外れます。
比較的若い方では、会場までは普段着で来て到着後に車内などで着替える方もいらっしゃるそうですが、着替える場所がない寺院もあるため、最初から法要に適した服装で行く方が安心とのことです。
例外は、僧侶によるお勤めがなくお墓参りだけを行う場合で、このときは派手すぎない普段着でも差し支えないとされています。いずれの場合も、事前に親族同士で服装の程度を合わせておくと当日ちぐはぐになりません。
お寺は他家の法要と同じ日に重なる共有の場のため、身内だけであっても平服(略喪服)まで崩さない方が安心です。
同じ日に他のご家族の法要や四十九日が並行して行われていることも珍しくありません。土日や春・秋のお彼岸時期は特に重なりやすく、本堂や控室を共有する場面も出てきます。
そんな空間に普段着やカジュアルな平服で行くと、廊下ですれ違う他家のご親族から見られて気まずい思いをします。施主(喪主)の立場ならなおさら、お坊さんに失礼がないよう喪服を選ぶのが安心です。
「家族だけの会だから」と独立した場ではなく、お寺という共有空間で行うものだと意識しておくのが大切です。

お寺での一周忌は、男女とも黒の準喪服を基本に、靴を脱ぐ・正座するという2点への備えが必要になります。
| 対象 | 基本の服装 | お寺ならではの注意点 |
| 男性 | 黒の無地スーツ・白シャツ・黒無地ネクタイ | 本堂で靴を脱ぐので穴のない黒無地の靴下を |
| 女性 | 黒のワンピース・アンサンブル | ふくらはぎ丈のスカート・胸元の開きに注意 |
| 子供 | 制服/なければ落ち着いた色の服 | キャラクターものや音の鳴る靴はNG |

男性は黒の無地スーツに白シャツ、黒無地ネクタイが基本で、加えて黒無地の靴下が必須になります。
本堂に上がる際は必ず靴を脱ぐので、靴下が丸見えになります。黒無地で、穴の空いていない靴下を選んでいるか、出かける前に必ず確認しましょう。
古びてかかとが薄くなっているものも避けたいところ。気になる方は、出かける前に新品をおろしておくと、当日の心配がひとつ減ります。前章のとおり、現場で実際に起きている失敗はネクタイの忘れものと色物の靴下に集中しています。

女性は黒のワンピースやアンサンブルに黒のストッキングを合わせ、スカートはふくらはぎ丈を選びます。
ストッキングは黒(20〜40デニール)を選びます。肌色のストッキングは慶事用なので、間違えて選ばないように注意してください。
お寺特有の落とし穴は『正座』です。椅子がない本堂もあるので、座ったときに膝が隠れるふくらはぎ丈のスカートが安心。胸元が大きく開く服も、お辞儀や正座の動作で見えやすくなるため避けましょう。

中高生は学校指定の制服があればそれが正装で、制服がない場合は黒・紺・グレーの落ち着いた色の服で構いません。
男の子はシャツとズボン、女の子はワンピースなどが基本になります。キャラクターものや、歩くと音が鳴る靴は本堂では浮いてしまうのでNGです。
未就学児や赤ちゃんに厳格なマナーはありませんが、派手な原色や蛍光色、過度な柄物は避けるのが無難。おもちゃや音の出る絵本も、本堂では使えるかどうかを事前に確認しておくと安心です。
夏冬とも、上着の脱ぎ着や防寒は寺院の案内に従って調整してよく、体調を崩してまで我慢する必要はありません。
近年は冷暖房を備えた寺院も多いものの、本堂は天井が高いため、夏場は冷房が効きにくいことがあります。千葉氏によれば、読経前に和尚様から「暑ければ上着を脱いで構いません」と声をかけていただくことも多く、寺院によっては給水機を用意してくださるところもあるとのことです。無理に着続けて体調を崩すより、その場の案内に従って調整する方がよい、という考え方です。
| 季節 | やって構わないこと | 避けたいこと |
| 夏 | 寺院から案内があれば上着を脱ぐ/吸湿速乾のインナーを着る/用意されていれば水分を取る | 半袖・ノースリーブのまま参列する/サンダルやポロシャツで行く |
| 冬 | 黒の防寒インナーを着込む/膝掛けを使う/本堂に入る前に上着を脱ぐ | コートやマフラーを着たまま本堂に入る/厚手すぎるタイツ |
千葉氏によれば、読経中は上着を脱ぎ、祭壇の前に出るときだけ着用する方も多く見受けられるといいます。近年の酷暑では、最初から上着を着ずに来られる方も増えたように感じるとのことです。冬場はストーブやヒーターを用意している寺院が多く、寒い場合は女性を中心に膝掛けを使われる方も見受けられるといいます。
あわせて千葉氏が挙げるのが、ご高齢の方の体調です。高齢の方は暑さを感じにくく、法要中は大丈夫そうに見えても、その後のお墓参りを終えて帰る頃に体調を崩すことがあるといいます。服装のマナーは大切ですが、ご高齢の方や小さなお子さんは無理をせず、体調を優先して調整することが大切だとしています。

夏でも、本堂で読経や焼香が行われている間は、上着(ジャケット)を着用しておくのが基本のマナーです。
暑い日が続く7月や8月は正直しんどいですが、ここを自己判断で崩すと一気にカジュアルに見えてしまいます。上着を脱ぐのは、寺院や僧侶から案内があったときと考えておくと迷いません。
汗対策は事前準備が肝心です。おすすめなのが吸湿速乾性のインナー。見えないところで汗対策をして、表面はきっちり整える、というスタイルが現実的です。
女性は肌の露出を避け、五分袖以上の服を選びましょう。脇汗パッドや制汗シートも一つカバンに入れておくと、移動中に身だしなみを整えられて重宝しますよ。

冬の本堂は底冷えしますが、コートやマフラーは本堂に入る前に脱ぐのがマナーです。
そこで活躍するのが、見えない防寒インナー。黒のヒートテックなどを着込んでおけば、ぐっと過ごしやすくなります。
女性は厚手すぎるタイツを履くとカジュアルに見えるので、防寒インナーで温度調整する方が無難です。寒さがつらいときは、膝掛けを用意しておくと本堂でも使いやすくなります。

お寺での法事に必ず持っていくのは数珠と袱紗の2つで、革・毛皮の小物と光るアクセサリーは避けます。
数珠は貸し借りがマナー違反なので、必ず自分のものを持参してください。袱紗はお布施や香典を包むのに使います。お布施は袱紗に包むか切手盆にのせて渡します(金額の目安や表書きの書き方は一周忌のお布施|袋の書き方・お札の向き・渡し方で解説しています)。
動物の革や毛皮は『殺生』を連想させるため、お寺では特に避けるべきとされます。結婚指輪と一連のパールのネックレス以外は、家を出る前に外しておきましょう。

礼服以外で行ってよいか、子供の服がない、法要後の会食はどうするかなど、家族だけの一周忌で寄せられる疑問をまとめました。
Q. 一周忌に礼服以外で参列してもよいですか?
A. お寺で読経していただく法要であれば、礼服(準喪服)を選んでおくのが安心です。案内状に「平服で」とある場合に限り、黒・濃紺・ダークグレーのスーツやワンピース(略喪服)まで下げられます。普段着という意味ではありません。
Q. 家族から「私服でいいよ」と言われたら?
A. お寺に行く場合は、黒・紺・グレーなど暗い色のスーツやワンピースに留めます。監修者の千葉龍一氏も、問い合わせを受けた際には「暗い色のスーツであれば周囲から浮くことはない」と案内しているとしています。ジーンズやスニーカーはこの線から外れます。
Q. 子供に喪服がありません。買わないといけませんか?
A. 買う必要はありません。中高生は学校の制服が正装になります。制服がない場合は、黒・紺・グレーの落ち着いた色の手持ちの服で構いません。成長が早い時期なので、法事のたびに買いそろえる必要はないとされています。
Q. 法要後の会食(お斎)でも上着は着たままですか?
A. 千葉氏によれば、会食では最初のあいさつが終わると上着を脱ぐ方が多く、読経中よりも形式を気にせず、体調に合わせて調整してよいとのことです。夏場は読経中も、寺院から案内があれば脱いで構いません。
Q. 一周忌に持参するお供え物や香典は?
A. 家族のみでも、事前に取り決めがない限り、香典やお供え物(消えもの)を持参するのが基本です。迷う場合は施主に確認すると確実です。兄弟間で「今回は香典なしで」と決めてあれば、それに従えば大丈夫。代わりに、お供えのお花や果物を持参するご家庭も多いですよ。

お寺での一周忌は、身内だけ・家族のみでも準喪服を選んでおけば迷うことはありません。最後に要点をまとめます。
服装に迷ったときの判断基準は、いつだって『失礼にならない方』です。きちんとした装いで、心穏やかに故人を偲ぶ一日にしてくださいね。
なお、自宅で一周忌を営む場合は作法が変わります。詳しくは身内だけ・自宅での一周忌の服装は平服?喪服?マナーを徹底解説をご覧ください。四十九日の服装については四十九日法要の服装マナー!男女・身内のみ・季節別の注意点解説で解説しています。