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家族葬の挨拶はどこまで必要?残す場面は3つ|例文と、式のあとに残る挨拶

家族葬で喪主が挨拶をする場面は、一般葬より少なくなります。参列者が家族と近い親族だけなら、式の途中の挨拶は省いてかまいません。ただし、省いても残る挨拶が3つあります。出棺の前、会食の開始と終わり、そして僧侶へのお礼です。ここでは、この3場面でそのまま使える例文と、式が終わったあとに残る会社・近所・呼ばなかった方への挨拶までをまとめます。

この記事でわかること

  • 残るのは3場面:出棺前・会食の開始と終わり・僧侶へのお礼。通夜の開式スピーチと長い謝辞は家族葬では要りません。
  • 省いてよい線引き:同居の家族だけなら省けます。別居の親族や友人が来るなら短くても残します。
  • 長さは2〜3分:400〜600字が目安です。原稿を見て話してかまいません。
  • 省くなら合図を残す:挨拶より、終わりが分からないほうが困ります。誰が合図を出すか決めておきます。
  • 忌み言葉の出典:宗派の公式で確認できるのは4つの語だけです。残りは慣習で、重さが違います。
  • 本丸は式のあと:会社への三点セット、近所への挨拶回り、呼ばなかった方への挨拶状が残ります。
目次

家族葬で残す挨拶は「出棺前・会食・僧侶へのお礼」の3場面です

家族葬で残る挨拶は、出棺の前、会食の開始と終わり、僧侶へのお礼の3場面です。

当社がお手伝いする一般葬では、通夜の開式、通夜の終了時、通夜振る舞い、告別式・出棺、精進落としと、挨拶の機会が5つ前後あります。この5つをそのまま家族葬に持ち込むと、同じ顔ぶれに何度も同じお礼を述べることになります。参列者が10人前後の席で5回話すのは、話すほうにも聞くほうにも負担です。

当社が家族葬のお手伝いで見ている範囲では、実際に残っているのは下の3場面に集まります。まずこの3つだけを用意して、余裕があれば足す。この順番で決めると、原稿の準備が一晩で終わります。

【図解1:一般葬の挨拶と、家族葬で残る場面】

一般葬で用意する挨拶家族葬で残る場面通夜の開式スピーチ通夜の終了時通夜振る舞いの開始と終わり告別式の謝辞・出棺精進落としの開始と終わり絞る出棺の前棺を閉めた直後約1分会食の開始と終わり通夜振る舞い・精進落とし各30秒僧侶へのお礼到着時・読経後・見送り各一言薄い枠=家族葬では省かれやすい場面全部合わせても3〜4分で足ります

【表1:場面ごとの要否と長さの目安】

場面家族葬での要否長さ話す相手
通夜の開式省いてよい
通夜の終了時参列者が身内だけなら省いてよい1分参列者全員
通夜振る舞いの開始・終わり席を設けるなら残す各30秒会食に残った方
告別式の謝辞出棺の挨拶にまとめてよい
出棺の前残す1〜2分見送る方全員
精進落としの開始・終わり席を設けるなら残す各30秒〜1分会食に残った方
僧侶へのお礼残す各一言僧侶

そもそも家族葬とは何を指すのか、誰まで呼ぶのかから決めたい方は、家族葬の費用と呼ぶ範囲をあわせてご覧ください。当日の進行そのものを先に知りたい場合は、お葬式の流れとタイムスケジュールに時間割をまとめています。

家族葬でも喪主の挨拶は必要?タイミングと基本

家族葬で喪主が挨拶をするタイミングと基本

参列者が家族以外にもいるなら挨拶をします。同居の家族だけなら省いてかまいません。

家族葬に人数の決まりはありません。デジタル大辞泉は家族葬を「家族・親族を中心に営まれる葬式。多く、通夜・告別式などの儀式を小規模に行う。故人の親しい友人が参列することもある」(コトバンク/デジタル大辞泉)と説明していて、何人までという線は引かれていません。呼ぶ範囲が家ごとに違うので、挨拶が要るかどうかも人数ではなく顔ぶれで決まります。

喪主を誰が務めるかにも法律の決まりはありません。決め方や役割は喪主の決め方とやることにまとめています。

喪主が挨拶を行う4つのタイミング

通夜の終了時、通夜振る舞い、告別式・出棺時、精進落としの4つが基本のタイミングです。

  • お通夜終了時
  • 通夜振る舞い
  • 告別式・出棺時
  • 精進落とし

家族葬では、規模の都合上これらのタイミングのうち一部を省略することもあります。例えば、通夜振る舞いを行わない、または告別式と精進落としを同日に行うケースもあります。

会食そのものを設けない家族葬もあります。新型コロナの流行期には、通夜振る舞いを弁当やカタログギフトに置き換える対応が広がりました(日本経済新聞 2020年6月24日)。会食を設けないなら、会食の挨拶2回はそのまま消えます。事前に葬儀社と相談し、どのタイミングで挨拶が必要かを確認しておくと安心です。

同居の家族だけなら省ける。別居の親族や友人が来るなら残す

線引きは人数ではなく顔ぶれです。同居の家族だけなら省け、別居の親族や友人がいるなら残します。

同居していた家族は、式が始まる前から同じ場所にいます。改まって壇上からお礼を述べると、かえって間延びします。一方、別居の親族や友人は、時間を作って来ています。その方たちに向けては、短くても言葉があったほうが収まります。

迷ったときは「同居の家族以外が1人でもいるか」で判断してください。1人でもいるなら1分の挨拶を用意する。これで外しません。

家族葬でそのまま使える喪主挨拶の例文

家族葬でそのまま使える喪主挨拶の例文

通夜の終了時、会食、告別式・出棺、精進落としの4場面の例文を、そのまま使える形で並べます。

長すぎず、かつ真心が伝わる内容を心がけました。そのままコピペして使用できますが、自分の言葉を加えてアレンジするのも良いでしょう。〇〇の部分に故人のお名前を入れてお使いください。

お通夜終了時の挨拶

通夜の終わりに、参列のお礼と翌日の告別式の時刻、通夜振る舞いの案内を1分で伝えます。

本日はお忙しい中、〇〇のためにご参列いただきありがとうございました。
お陰様で、無事にお通夜を終えることができました。明日の告別式は午前10時からの予定です。
本来ならば改めてご挨拶申し上げるべきところですが、本日のご来場に対して、心より御礼申し上げます。
その後、通夜振る舞いのお席をご用意いたしております。
お疲れとは思いますが、故人もきっと喜ぶと思いますので、よろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。

通夜振る舞い(会食)での挨拶

食事の開始と終わりの2回、短く話します。料理が冷めないよう、どちらも30秒が目安です。

開式の挨拶(お食事前)

本日は故人のためにご参列いただき、ありがとうございました。
ささやかではございますが、通夜振る舞いをご用意させていただきました。どうぞ召し上がってください。
本当にありがとうございました。

閉式の挨拶(お開きの挨拶)

本日はお忙しい中ご参列いただき、また温かいお言葉をいただきました。心より感謝申し上げます。
お料理が温かいうちに召し上がっていただきたいので、本日はこの辺りで失礼させていただきます。
明日の告別式でも、何かとお世話になると思いますが、よろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。

通夜振る舞いは故人を偲ぶ時間であり、参列者との交流の場です。挨拶は料理が冷めないよう短くまとめるのがコツ。感謝の気持ちをシンプルに伝えることが大切です。

告別式・出棺時の挨拶

家族葬でいちばん残る場面です。参列のお礼と今後のお付き合いのお願いを2分で伝えます。

本日は故人のためにご参列いただき、ありがとうございました。お陰様で告別式を無事に執り行うことができました。
〇〇は皆様のお力添えがあって、最後の時間を穏やかに過ごすことができたと思います。
今後、ご遺族一同で力を合わせて、〇〇の遺志を継いでいく所存です。
何かとご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、今後ともお付き合いいただきますよう、心よりお願い申し上げます。
本日は本当にありがとうございました。

出棺前の1分だけで済ませたいとき

棺を閉めた直後に、参列のお礼と見送りのお願いだけを伝える型です。会食が無い日に使えます。

会食を設けない一日葬や、火葬場へ全員で向かう家族葬では、話す場面が出棺前の1回だけになります。その1回に、上の告別式の挨拶をそのまま当てると長すぎます。次の長さに詰めてください。

本日はお集まりいただき、ありがとうございました。
〇〇も、皆様に見送っていただけて安心していることと思います。
これから火葬場へ向かいます。どうぞ最後まで、〇〇を見送ってやってください。
本日は本当にありがとうございました。

精進落とし(会食)での挨拶

献杯を含む開式と、閉式の2回です。閉式で四十九日の予定を伝えると、案内の手間が減ります。

献杯を含む開式の挨拶

本日は火葬までお付き添いいただき、本当にありがとうございました。
故人も皆様の温かいお気遣いに、きっと感謝していることと思います。
ささやかではございますが、精進落としのお席をご用意いたしました。
それでは、故人の冥福を祈りまして、献杯させていただきたいと思います。
皆様のご協力をいただき、ありがとうございました。

この例文の「冥福」は、真宗大谷派では使われない言葉です。同派の公式サイトは、冥福を「冥土(冥途)の幸福」を略した言葉と説明したうえで、真宗の教えでは亡くなった方は迷うことなく浄土に還ると述べています。なお、浄土真宗本願寺派の公式には冥福についての記述が見つからないため、浄土真宗としてひとまとめには書けません。故人が真宗大谷派なら「故人を偲びまして、献杯させていただきます」と言い換えてください。詳しくは忌み言葉と「ご冥福」はどこまで気にするかでまとめています。

閉式の挨拶

本日は朝早くからお付き添いいただき、ありがとうございました。お蔭様で全ての儀式を無事に終えることができました。
四十九日のお参りは〇月〇日を予定いたしております。その折には改めてご案内申し上げます。
今後も何かとお世話になることがあると思いますが、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。本当にありがとうございました。

アレンジできる喪主挨拶の例文

喪主の立場と、故人の亡くなり方に合わせて例文の一部を差し替えると、言葉の温度が変わります。

より心のこもった挨拶にしたいという方は、故人との関係性や状況に合わせて、以下の例文パーツをアレンジしてご利用ください。既存の例文の一部を置き換えるだけで、より温かみのある挨拶になります。

喪主が配偶者(妻・夫)または子の場合

配偶者は生前のお付き合いへのお礼を、子は故人から受け取ったものを、それぞれ一文で足します。

妻・夫目線での挨拶例

〇〇が生前お世話になった皆様へ、心より御礼申し上げます。長年、皆様の温かいご支援をいただきながら過ごすことができました。
今後は、〇〇の遺志を受け継ぎ、ご恩返しができるよう努めてまいります。

子目線での挨拶例

〇〇の子として、改めて父親(母親)の温かさを実感いたしました。
これまでの人生で、こんなに多くの皆様に支えられていたのだと気づきました。
今後は、父(母)から教えていただいたことを大切にして、精一杯生きていきたいと思います。

故人が長期療養していた・突然亡くなった場合

長期療養ならお見舞いへのお礼を、急死なら心の整理がつかないことを、そのまま言葉にします。

長期療養の場合

〇〇は長い闘病生活を送りました。その間、皆様から温かいお見舞いやお励ましの言葉をいただき、本当にありがとうございました。
皆様の優しさが、本人とご家族の大きな支えになっていました。心より感謝申し上げます。

急死した場合

突然のことで、本人も家族も心の整理がつかぬまま、本日を迎えてしまいました。
しかし、〇〇がこれまで皆様と交わした時間や言葉は、決して失われることはありません。
〇〇は、限られた人生を全力で生きたのだと、改めて感じています。

身内だけで「ご多用のところ」が浮くとき

参列者が同居家族と近い親族だけなら、定型句を外して呼びかける形に置き換えられます。

「本日はご多用のところ」は、遠方や職場から来ていただいた方への言葉です。前日から泊まり込んでいる家族に向けて言うと、距離が生まれます。当社がお手伝いした席でも、この一句だけが浮いてしまう場面がありました。

今日は、〇〇のために集まってくれてありがとう。
〇〇も、この顔ぶれで見送ってもらえて、いちばん安心していると思います。
これから少しの時間ですが、〇〇の話を聞かせてください。

形式的な挨拶を省いて一人ひとりと話したいとき

省くこと自体を先に伝えます。理由を最初に置くと、素っ気なさが伝わらずに済みます。

挨拶を省くと決めたときに困るのは、参列者に何も言わずに終わる形になることです。省く理由を10秒で先に置いてから、席を回ってください。

本日は改まったご挨拶を省かせていただき、代わりに皆様のお席へうかがいます。
〇〇のことを、一人ひとりからお聞かせいただければと思います。
お集まりいただき、ありがとうございました。

僧侶・葬儀社の担当者への挨拶

僧侶へのお礼は、家族葬でも省きません。到着時、読経後、お見送りの3回が目安です。

参列者への挨拶は省けても、僧侶へのお礼は残ります。参列者は身内ですが、僧侶は外から来ていただいた方だからです。当社がお手伝いする範囲では、式そのものより、ここを忘れて後から気にされる喪主のほうが多く見受けられます。

僧侶へのお礼はいつ言うか

到着時のお迎え、読経後のお礼、お帰りの見送りの3回です。どれも一言で足ります。

到着時
本日はどうぞよろしくお願いいたします。控室をご用意しておりますので、こちらへどうぞ。

読経のあと
本日はご丁寧にお勤めいただき、ありがとうございました。

お見送り
本日は最後までお世話になりました。四十九日の折にも、どうぞよろしくお願いいたします。

お布施を渡すときの一言

袱紗から出して切手盆か袱紗の上に載せ、両手で差し出しながら一言を添えて渡します。

お布施は読経料ではなく、ご本尊へのお供えです。「お支払いします」ではなく、お納めいただく形で言葉を選びます。

本日はありがとうございました。些少ではございますが、どうぞお納めください。

封筒の表書きや金額の目安、渡す向きはお布施の書き方と渡し方に図解でまとめています。

葬儀社の担当者へ

式の終わりに、担当者と司会へ一言お礼を伝えます。忘れやすいので式次第に書いておきます。

葬儀社への挨拶は義務ではありません。ただ、当日の細かな判断はその場で担当者が引き受けています。火葬場へ向かう直前に一言渡しておくと、そのあとの連絡もしやすくなります。

家族葬の喪主挨拶を成功させる4つのポイント

長さは2〜3分、原稿を見てよい、忌み言葉に気を配る、ゆっくり話す。この4つを押さえます。

挨拶の長さは2〜3分(短く簡潔に)

当社の事例では2〜3分、文字数なら400〜600字です。長く話すより短く言い切るほうが届きます。

長すぎる挨拶は、高齢の参列者に負担がかかり、料理も冷めてしまいます。短い挨拶こそが、相手を尊重した礼儀正しい行動です。

「参列への感謝」「故人への思い」「今後のお付き合いへのお願い」この3つを簡潔に伝えることを心がけましょう。無理に長く話そうとするより、心を込めて短く話すことが大切です。

カンペ(原稿)を見ながら話してもOK

原稿を見て話すのはマナー違反ではありません。当社の事例では、読んだほうが最後まで話せています。

悲しみや緊張で、当日に頭が真っ白になることがあります。カンペやメモを見ながら話すことは、落ち着いて話すための工夫として適切な対応です。

暗記して臨むと、詰まったときに戻る場所がなくなります。当社がお手伝いした席でも、原稿を持っていた方のほうが、途中で声が震えても最後まで読み切っています。ただし、スマートフォンを見るのは避けた方が無難です。葬儀社に手配してもらった台帳型のメモや、紙のメモを持つのが良いでしょう。

事前に何度か読み直して、原稿に目を落とす時間を最小限にすることがコツです。

使ってはいけない「忌み言葉」に注意

重ね言葉や生死を直接指す言葉は、慣習として避けられています。言い換えを表にまとめました。

下の言い換えは、葬儀社などが慣習として案内しているものです。法令や辞書に一覧があるわけではありません。出典の重さの違いは忌み言葉と「ご冥福」はどこまで気にするかで整理しています。

【表2:慣習として案内されている言い換え】

避けるとされる言葉言い換え表現案内されている理由
たびたび、次々、重ねてこの度は、今回は重ね言葉(不幸が重なることを連想させる)
死ぬ、亡くなる、生きている時故人、かつて、生前生死を直接的に表現するのを避ける
浮かばれない、成仏できない安らかに眠る、心安らかに不吉な表現を避ける
もしもの時、万が一〇〇の際に不幸を予期させる言葉を避ける
切る、断つ終える、別れ縁を切ることを連想させる

参列者が聞き取りやすい声でゆっくり話す

一呼吸置いて、句読点で間を取ります。高齢の参列者に合わせると、全員に届く速さになります。

緊張すると、つい早口になってしまいます。意識して一呼吸置き、ゆっくり大きな声で話すことが大切です。句読点のある箇所で十分な間を取り、一つ一つの言葉を丁寧に発音することで、より印象的な挨拶になります。

練習の際は、家族に聞き手になってもらい、聞き取りやすさを確認するのがお勧めです。

挨拶が難しい場合の対処法(挨拶なし・代読)

家族葬で挨拶が難しい場合の対処法

挨拶をしない選択もあります。ただし、解散の合図だけは誰かが出す必要があります。

家族葬なら「挨拶なし」でもマナー違反ではない

参列者が身内だけなら、挨拶を省いてもマナー違反にはあたりません。事前の共有が要ります。

家族葬はプライベートな儀式だからこそ、形式にとらわれず、遺族の気持ちを優先させるべきです。

ただし、親族外の参列者がいる場合は、事前に「挨拶は控えさせていただく」と親族に根回ししておくことが、後のトラブル回避につながります。葬儀社にも事前に伝えておくと、当日はスムーズに進みます。

司会者や他の親族に代読・代理をお願いする

手紙を書いて司会に代読してもらうか、親族の代表に代わってもらいます。どちらでも問題ありません。

涙で言葉に詰まりそうな場合は、葬儀社の司会者に手紙を代読してもらうという方法もあります。あらかじめ手紙を用意しておき、本番では読み手に託すのです。

また、親族の中で落ち着いた方に、喪主に代わって挨拶をお願いすることも可能です。故人の兄弟姉妹や、親族の代表者に挨拶をしてもらうことで、一族の絆を感じさせる挨拶になります。どちらの方法でも問題ありませんので、遺族で相談して決めましょう。

途中で声が出なくなっても、そこで終わりにしてかまいません。頭を下げて席に戻る形でも、参列者には伝わります。

省いても「解散の合図」だけは残す

挨拶を省いた席で困るのは、終わりが分からないことです。合図を誰が出すか決めておきます。

参列者が戸惑うのは、喪主が話さなかったことそのものではありません。いつ席を立ってよいのか、いつ帰ってよいのかが分からない時間です。当社がお手伝いした席でも、この点だけは決めておくようお願いしています。

司会がいるなら、司会に締めてもらうのがいちばん確実です。次のように代弁してもらえます。

本日はご会葬いただき、誠にありがとうございました。
喪主よりご挨拶を申し上げるところではございますが、深い悲しみのため控えさせていただきます。
これをもちまして、本日の式を終了とさせていただきます。

司会を立てない家族葬なら、親族の代表に「そろそろお開きにしましょう」と声を出してもらうだけで足ります。

忌み言葉と「ご冥福」はどこまで気にするか

宗派の公式で確認できるのは4つの言葉だけです。残りは慣習で、出典の重さが違います。

忌み言葉を扱う記事はたくさんありますが、どこまでが確かな根拠のある話で、どこからが慣習なのかを分けて書いたものは見当たりません。当社で一次資料まで当たったので、その結果をそのまま出します。

辞書に載っているのは「忌み言葉」という概念だけ

国語辞典に弔事の忌み言葉の一覧はありません。挙例は斎宮・婚礼・正月の言い換えです。

精選版日本国語大辞典は「忌み詞」を「忌み慎んで言わないことば。宗教上の理由、または不吉な意味を連想させる発音によって、使うのをきらうことば」(コトバンク/精選版日本国語大辞典)と説明しています。挙げられている例は、斎宮での「仏」「経」「僧」、婚礼の「去る」「帰る」、正月三が日の「坊主」「箒」です。改訂新版世界大百科事典と日本大百科全書も同じで、分類は山言葉・沖言葉・正月言葉・夜言葉・縁起言葉でした。

【実測】収録4辞典を確認しましたが、葬儀の場に限った忌み言葉の一覧は1つも載っていませんでした(2026年9月10日確認)。文化庁の国語施策にも該当する記述はありません。

つまり、重ね言葉の一覧は葬儀業界の慣行として流通しているもので、公的な出典があるわけではないということです。だからといって使ってよいという話にはなりません。参列する側が気にしている以上、避けておくほうが無難です。根拠の重さと、実務で気を配るかどうかは別の問題として扱ってください。

宗派の公式で確認できる言い方

真宗大谷派は「冥福」と「霊前」を、本願寺派は「御霊前」と「天国」を公式に否定しています。

ここだけは慣習ではなく、宗派そのものが公式サイトで説明している内容です。断定できます。

【表3:宗派の公式サイトで確認できる言葉】

言葉公式の説明言い換え出典
ご冥福真宗大谷派=冥福は「冥土(冥途)の幸福」の略。真宗では亡くなった方は迷うことなく浄土に還り仏となるお悔やみ申し上げます/偲びまして真宗大谷派(東本願寺)公式
ご霊前真宗大谷派=浄土真宗では亡くなった方を「霊」として祀ることはないお仏前真宗大谷派(東本願寺)公式
御霊前(香典の表書き)浄土真宗本願寺派=故人の霊に捧げるのではなく仏さまに捧げるので、書くなら「御仏前」御仏前/御供/御香典浄土真宗本願寺派(西本願寺)公式FAQ
天国浄土真宗本願寺派=「浄土に往き生まれる」と、死ではなく生で表現するお浄土浄土真宗本願寺派(西本願寺)公式FAQ

「成仏」「往生」を避けるべきだと書いている記事もありますが、【実測】両派の公式サイトを確認した範囲では、この2語についての記述は見つかりませんでした(2026年9月10日確認)。また「本願寺派も冥福を使わない」と説明されることがありますが、本願寺派の公式FAQ全25項目に冥福の記述はなく、根拠として出てくるのは僧侶個人のコラムです。ここは断定できません。

宗派が分からないときは「お悔やみ」に寄せる

宗派が分からない場面では「お悔やみ申し上げます」に寄せると、言い換えの必要がありません。

喪主として自分の家の宗派が分かっているなら、上の表のとおりに整えれば済みます。困るのは、参列する側として相手の宗派が分からないときです。

「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷さまです」は、上の表の4語のように公式に否定されている宗派が見つからない言い方です。迷ったらこちらに寄せてください。ただし、神道やキリスト教の式で問題がないかまでは、一次資料で確認できていません。

式が終わったあとに残る「言葉の仕事」

式のあとに残るのは、会社への挨拶・近所への挨拶回り・呼ばなかった方への挨拶状の3つです。

式の挨拶は当日で終わりますが、家族葬ではそのあとに言葉の仕事が残ります。呼ぶ範囲を絞った分、知らせていない方が残るからです。当社が相談を受ける場面でも、式中の挨拶より、この3つで手が止まる方のほうが目立ちます。

【図解2:式のあとに残る3つの挨拶と時期】

葬儀の日四十九日〜1週間出社した日忌明けが目安近所への挨拶回り向こう三軒両隣と特に世話になった家平服・手土産は千円台〜会社への挨拶1. 香典のお礼2. 休みのお礼3. 滞りなく終えた報告呼ばなかった方への挨拶状1. 亡くなった事実2. 家族葬にしたこと3. 事後になったお詫び年末に重なるときは、挨拶状を出さず喪中はがきにまとめる形もあります

会社への挨拶(忌引き明けの三点セット)

香典のお礼、休みのお礼、滞りなく終えた報告の3つを、出社した日の朝に伝えます。

まず前提として、忌引き休暇は法律で決まった休暇ではありません。厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」は特別休暇を「法律によって義務とされている休暇ではなく、企業が任意に設ける休暇制度を指します」と定義していて、慶弔休暇をその例に挙げています(厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト)。日数も有給か無給かも、勤め先の就業規則で決まります。法定の最低日数はありません。

出社した日の朝、直属の上司と部署へ次のように伝えます。

このたびは、お休みをいただきありがとうございました。
ご丁寧にお心遣いまでいただき、恐れ入ります。
お陰様で葬儀を滞りなく済ませることができました。本日から通常どおり勤務いたします。

香典返しで迷いやすいのが、会社名義と個人名義の違いです。当社の事例では、会社名義や部署の慶弔規定から出たものは福利厚生の扱いとして返礼せず、上司や同僚が個人名義で包んだものには返礼する形が取られています。どちらの名義だったかは総務に確認すれば分かります。

なお、忌引きの連絡と同時に香典辞退を伝えていないと、慶弔規定で香典や供花が自動で動くことがあります。辞退したい場合の書き方は香典辞退の文面と受付対応にまとめています。

近所への挨拶回り

向こう三軒両隣と特に世話になった家へ、葬儀後1週間以内に平服でうかがいます。

家族葬で近所の方を案内していない場合は、あとから知らせる形になります。当社が相談を受ける範囲では、玄関先で立ち話をして終える形が多く、長居はしません。伝えるのは次の5点です。

  • いつ亡くなったか
  • 家族葬で見送ったこと
  • 事後の連絡になったお詫び
  • 香典や供物を辞退する場合はその旨
  • 今後のお付き合いのお願い

先日、母の〇〇が亡くなりまして、家族だけで見送りました。
ご連絡が後になってしまい、申し訳ございません。
お気遣いはどうぞご無用にお願いいたします。今後とも、よろしくお願いいたします。

当社の事例では、手土産は千円台から3千円程度の菓子折りが選ばれています。服装は喪服ではなく平服にします。喪服でうかがうと、相手に身構えさせてしまいます。

ただし、近所のどこまでを回るか、いつうかがうか、手土産を持つかは地域で違います。公的な決まりはありません。迷ったら、同じ地域で先に葬儀を出した家に合わせるのが確実です。

呼ばなかった方への挨拶状

亡くなった事実、家族葬にしたこと、事後になったお詫びの3つを書きます。忌明けが目安です。

会葬礼状と、家族葬のあとに出す挨拶状は別のものです。混同すると出す相手を間違えます。

【表4:会葬礼状と、家族葬後の挨拶状の違い】

会葬礼状家族葬後の挨拶状
出す相手式に参列した方参列を案内しなかった方
渡す時期通夜・告別式の当日忌明け(四十九日後)が目安
渡し方受付で会葬御礼品と一緒に郵送(はがき・封書)
書く内容参列へのお礼逝去の報告・家族葬にしたこと・事後になったお詫び・生前のお礼
家族葬で省けるかごく身内だけなら省く例もある知らせていない方がいるなら省かない

父〇〇 儀 かねてより療養中のところ 去る〇月〇日 〇歳にて永眠いたしました
葬儀につきましては 故人の生前の希望により 近親者のみにて相済ませました
本来であれば早速お知らせ申し上げるべきところ ご通知が遅れましたこと 深くお詫び申し上げます
生前に賜りましたご厚情に 故人に代わりまして厚く御礼申し上げます

出す相手は、故人の友人、勤め先の関係者、年賀状のやり取りがあった方が中心になります。年末に近い時期なら、挨拶状を別に出さず喪中はがきにまとめる形もあります。

参列や香典そのものを辞退したいときの書き分けは、参列・香典・供花・弔問の辞退の伝え方にまとめています。

香典を後から持ってこられたとき

受け取るか辞退するかを、来られる前に家族で決めておきます。その場で迷うと相手も困ります。

家族葬を知った方が、後日あらためて香典を持って来られることがあります。その場で受け取るか返すかを迷うと、相手にも気を遣わせます。挨拶状を出す前に、家族で方針を決めておいてください。

辞退する場合は、断る理由を故人や家族の意向として伝えると角が立ちません。

わざわざお運びいただき、ありがとうございます。
ただ、故人の希望でご厚志はご辞退させていただいております。
お気持ちだけ、ありがたく頂戴いたします。

受け取る場合は、いただいた日を記録して、慣習として案内されている半返しを目安に、忌明け後へ返礼します。半返しの割合に公的な根拠はなく、地域や間柄で三分の一とする例もあります。

よくある質問

本文で触れなかった条件や例外を、喪主の方から寄せられる7つの質問にまとめました。

Q. 家族葬の喪主挨拶は何分くらいですか?

A. 2〜3分、文字数なら400〜600字が目安です。出棺前だけに絞る場合は1分でも足ります。会食の開始と終わりは各30秒で、こちらは長くしないほうが喜ばれます。なお、この長さは葬儀当日の話で、四十九日の法要で施主として述べる挨拶は、参列者が同じ顔ぶれでも別に用意します。

Q. 参列が5人以下でも挨拶はしたほうがいいですか?

A. 人数ではなく顔ぶれで決めてください。5人が全員同居の家族なら省いてかまいません。5人のうち1人でも別居の親族や友人がいるなら、1分の挨拶を用意します。会場が自宅で、玄関先で一人ずつ見送れる場合は、その場の一言に代えてもかまいません。立って話す形にこだわる必要はありません。

Q. 喪主が高齢・体調不良のときは誰が挨拶しますか?

A. 喪主の代わりに、長男・長女など親族の代表が述べる形で問題ありません。葬儀社の司会に代読を頼む方法もあります。喪主を交代する必要はなく、挨拶だけを他の方が引き受ける形にできます。

Q. 挨拶の途中で泣いてしまったらどうすればいいですか?

A. 途中でやめてかまいません。頭を下げて席に戻る形でも失礼にはあたりません。心配なら、原稿を親族に1部渡しておき、続きを読んでもらえるようにしておくと安心です。原稿を見ながら話すことも問題ありません。

Q. 「ご冥福をお祈りします」は喪主が使ってもいいですか?

A. 真宗大谷派では使いません。同派の公式サイトが、冥福を「冥土の幸福」の略と説明したうえで、真宗では亡くなった方は迷わず浄土に還ると述べています(真宗大谷派 公式)。浄土真宗本願寺派の公式には冥福の記述が見つからないため、浄土真宗としてまとめては書けません。他の宗派についても、公式に否定した記述は確認できていません。判断がつかないときは「お悔やみ申し上げます」に置き換えると迷いません。

Q. 家族葬でも会葬礼状は用意しますか?

A. 参列者が同居家族だけで、後日あらためてお礼を伝えられるなら省く例もあります。別居の親族や友人が参列するなら用意します。参列しなかった方へ出す挨拶状は、会葬礼状とは別に忌明けを目安に用意してください。

Q. 会社に香典を辞退したいと伝えるのはいつですか?

A. 忌引きの連絡と同時です。あとから伝えると、慶弔規定にもとづいて香典や供花の手配が先に動いてしまいます。連絡のときに「家族葬のため、ご厚志は辞退させていただきます」と一文添えてください。すでに手配が動いたあとなら、断るより受け取って香典返しをするほうが、先方の経理処理を増やさずに済みます。

まとめ

残す場面を3つに絞り、式のあとの3つの挨拶まで決めておくと、言葉が足りなくなりません。

【表5:この記事の要点】

場面やること長さ・時期
出棺の前参列のお礼と見送りのお願い1〜2分
会食の開始・終わり席の案内とお開きの合図各30秒
僧侶へ到着時・読経後・見送りの一言各一言
挨拶を省くとき解散の合図だけは誰かが出す当日
近所へ玄関先で5点を伝える葬儀後1週間以内
会社へ香典・休み・報告の三点セット出社した日の朝
呼ばなかった方へ逝去の報告・家族葬・お詫び・生前のお礼忌明けが目安

家族葬での喪主挨拶は、完璧な言葉遣いよりも、参列者への感謝と故人を思う気持ちが大切です。形式にとらわれず、自分の言葉で心からの感謝を伝えることが最も大切です。

それでも当日は、思ったとおりに話せないものです。原稿を持って立ち、途中で詰まったら頭を下げる。それで参列者には十分伝わります。上手に話すことより、誰に何をいつ言うかを先に決めておくほうが、あとの手戻りを減らします。

費用の内訳から決めたい方は家族葬の金額の内訳を、呼ぶ範囲から決めたい方は家族葬とは何かをあわせてご覧ください。大阪で葬儀場をお探しの方は、近くの葬儀場までお気軽にご相談ください。深夜でもお電話を承っています。

記事監修者

記事監修者

千葉龍一
【厚生労働省認定技能試験 1級葬祭ディレクター】

葬祭業務に13年以上従事し、事前相談から打合せ、施行まで累計1,000件以上の葬儀をサポートする1級葬祭ディレクター。一般葬・家族葬を中心に、ご家族の意向と地域の慣習を尊重した葬儀運営を得意としている。 特に岩手県南部地域の葬儀事情(寺院での葬儀行列や、七日ごとの「拝み日」など)に精通。葬儀が単なる儀式にならず、故人らしさが感じられるお見送りとなるよう、ご遺族の気持ちに寄り添う対応を信条とする。喪主様やご遺族様が最期の時間に集中できるよう、先回りした進行・準備のサポートを徹底している。

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